航空インテリジェンスラボ|2026年6月7日
悪天候でも着陸できる空港へ
高松空港では現在、ILS(Instrument Landing System:計器着陸装置)カテゴリーIIIへの対応整備が進められています。
では、この設備はどのような意味を持つのでしょうか。
簡単に言えば、
霧や大雨など視界不良時でも、航空機がより安全かつ確実に着陸できるようになる設備
です。
高松空港周辺では、特に冬季や早朝に霧が発生することがあります。
こうした状況では、滑走路が見えにくくなり、着陸のやり直し(ゴーアラウンド)や他空港への目的地変更(ダイバート)が発生することがあります。
ILSカテゴリーIIIの導入は、こうしたリスクを大幅に低減し、空港の運航安定性向上につながります。
計器進入方式とは?
航空機が悪天候時に安全に着陸するためには、「計器進入方式(Instrument Approach Procedure)」を使用します。
計器進入方式は大きく2種類に分類されます。
精密進入方式(Precision Approach)
- 横方向の誘導あり
- 縦方向の誘導あり
- 高い精度で滑走路へ誘導
代表例:
- ILS(計器着陸装置)
非精密進入方式(Non-Precision Approach)
- 横方向の誘導のみ
- 縦方向はパイロットが計器を参考に判断
代表例:
- VOR進入
- NDB進入
- 一部のRNAV進入
両者の最も大きな違いは、
「縦方向の誘導があるかどうか」
です。
ILSはどのように航空機を誘導するのか
ILSは主に2つの電波を利用して航空機を滑走路まで誘導します。
ローカライザー(Localizer)
滑走路中心線に対する左右方向を誘導
グライドスロープ(Glide Slope)
適切な降下角を維持するための上下方向を誘導
この2つの誘導により、航空機は雲や霧の中でも正確な進入が可能となります。
ILSカテゴリーの違い
ILSには性能に応じたカテゴリー区分があります。
CAT I
- 世界で最も一般的
- 多くの空港で採用
- 一定の視界が必要
CAT II
- CAT Iより低視程で運用可能
- 空港設備や乗員資格の要件が厳しくなる
CAT III
さらに以下の区分に分かれます。
- CAT IIIA
- CAT IIIB
- CAT IIIC
カテゴリーが上がるほど、より低い視界条件でも着陸が可能になります。
特にCAT IIIBでは、非常に濃い霧の中でも運航継続が可能です。
CAT IIICは理論上、視界ゼロでも着陸・地上走行が可能とされていますが、実際に運用している空港はほとんどありません。
DA(決心高度)とRVR(滑走路視距離)
低視程運航では、2つの重要な指標があります。
DA(Decision Altitude:決心高度)
パイロットが着陸を続けるかどうかを最終判断する高度です。
この高度に到達した時点で、
- 滑走路灯火や進入灯が確認できれば着陸継続
- 確認できなければ復行(ゴーアラウンド)
となります。
RVR(Runway Visual Range:滑走路視距離)
滑走路上で前方がどれだけ見えるかを数値化したものです。
一般的な気象観測の「視程」とは異なり、
実際にパイロットが滑走路上で確認できる距離
を示します。
航空会社はどのように運航判断を行うのか
航空会社は出発前および飛行中に、
目的地空港のRVRや気象条件が運航基準を満たしているかを確認します。
- 基準以上 → 着陸可能
- 基準未満 → 代替空港設定
- 条件付き運航
- 出発遅延
- 欠航
などの判断が行われます。
そのため、ILSカテゴリーの向上は航空会社の運航計画にも大きな影響を与えます。
高松空港にCAT IIIが導入される意味
高松空港でILSカテゴリーIIIが運用開始されると、
- 悪天候時の着陸成功率向上
- ダイバートの減少
- 欠航率の低下
- 定時運航率の向上
- 航空会社の運航効率改善
が期待されます。
さらに、
利用者にとっては移動の確実性が向上し、地域経済や観光への影響も小さくなるため、
CAT IIIは単なる航空保安設備ではなく、地域の交通インフラを支える重要な投資
と言えるでしょう。
航空安全の観点から見るCAT IIIの意義
航空事故調査では、悪天候そのものよりも、
「悪天候下での運航判断」
が事故要因となるケースが少なくありません。
ILSカテゴリーIIIの整備は、単に着陸能力を向上させるだけでなく、
低視程環境下における運航リスクを低減し、安全性と定時性を同時に向上させる重要なインフラ整備
として注目されています。


