JAL・ANAが選んだ「E190-E2」はどんな機体か――性能・運航実績と三菱スペースジェットとの関係【航空技術・航空経済】

Steve Lynes from Sandshurst, United Kingdom, CC BY 2.0 , via Wikimedia Commons/【写真:2018年ファーンボロー国際航空ショーで飛行展示を行うエンブラエルE190-E2(英国ハンプシャー州、2018年7月17日)】
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【この記事の要点】

  • JAL(確定16機+オプション10機、2029年度から)とANA(確定23機+オプション5機、2028年度から)の発注を合わせ、確定39機・最大54機となった。
  • 従来型E190に対し、Embraerは燃料消費量17.3%減(2018年時点)を公表している。要因はGTFエンジン(PW1900G)、新設計の主翼、三軸フル・フライ・バイ・ワイヤである。
  • 就航後もADが複数発行され、PW1900Gを含むGTF系列では粉末冶金材に起因する検査が続いている。
  • JALは2014年に32機(全機確定)、ANAは2008年に最大25機のスペースジェットを発注していたが、2023年2月7日に開発中止が正式発表された。

2026年10月14日、日本航空(JAL)は、グループ会社ジェイエア(J-AIR)のリージョナル機の後継として、Embraer(エンブラエル)製「E190-E2」を導入すると発表した。全日本空輸(ANA)もすでにE190-E2の導入を決めており、日本の二大航空グループが同じ機種を選んだ形になる。

E190-E2は、従来型E190にエンジンを載せ替えただけの機体ではない。新設計の主翼、ギヤードターボファンエンジン、全面的なフライ・バイ・ワイヤを組み合わせた、100席前後の市場向けの第2世代機である。さらにこの選定は、JALとANAがかつて導入を予定していた三菱スペースジェット(旧MRJ)の開発中止という経緯の延長線上にも位置づけられる。

当ラボは、E190-E2の開発史、機体性能、運航実績、技術的課題を整理したうえで、日本の国内線市場への影響を考察する。

目次

1. JAL・ANAの発注内容

確定発注オプション納入開始備考
JAL(J-AIR向け)16機10機2029年度予定2026年10月14日発表
ANA23機5機2028年度予定2025年2月に15機+5オプションを決定、同年6月に正式発注。2026年7月29日に8機の追加を決定し、9月4日に正式発注
合計39機15機オプション込みで最大54機

JALの発表によれば、E190-E2はJ-AIRのE170およびE190の後継機である。J-AIRの現有機材はE170が18機(1クラス76席)、E190が14機(2クラス95席)の計32機である。一方、JALは機種別の更新機数、導入完了時期、投入路線、新機材の座席数や客室仕様を公表していない。

ANAの追加8機は、アイベックスエアラインズ(IBEX)とのANA便の受委託事業向けとされる。ANAホールディングスからIBEXへ機体をリースし、路線計画と販売をANA、運航をIBEXが担う枠組みである。IBEXはCRJ700を2029年から順次退役させ、E190-E2の運航体制へ移行する。

なお、E190-E2は日本の航空会社にとって初のE2シリーズであり、ANAにとっては初のEmbraer機でもある。

2. Embraerとは何者か――E190-E2に至る系譜

Embraerは1969年にブラジルで設立された航空機メーカーである。ターボプロップ機のEMB-110、EMB-120を経て、1990年代にERJ 135/140/145を開発し、50席級リージョナルジェット市場で地位を築いた。

2000年代には、50席級と大型ナローボディ機(ボーイング737、エアバスA320)の間を埋める70〜120席級として、E170/E175/E190/E195からなる初代E-Jetsを投入した。E190は2005年に型式証明を取得した機体で、客室は左右2席ずつの2+2配列であり、中央席が存在しない。この客室構成はE190-E2にも引き継がれている。

2010年代に入ると、エアバスA320neo、ボーイング737 MAX、ボンバルディアCSeries(現エアバスA220)など、燃費効率の高い新世代機が出そろった。Embraerは2013年のパリ航空ショーでE-Jets E2の開発を発表した。E190-E2は2016年2月25日にロールアウトし、5月23日に初飛行している。

2018年2月28日には、ブラジルANAC、米FAA、欧州EASAの3当局から同時に型式証明を取得した。Embraerによれば、プログラム発足から認証取得まで56か月、初代E190から約75%の機体システムが新規となった。初号機は4月4日にノルウェーのWiderøeへ引き渡され、4月24日にベルゲン〜トロムソ線で商業運航を開始している。なお、型式証明上の名称は「ERJ 190-300」である。

3. E190-E2の主要諸元

項目E190-E2
全長36.24m
全幅33.72m
全高約10.7m
標準座席数97〜114席(客室配置による)
最大離陸重量56,400kg
最大着陸重量49,050kg
最大ペイロード13,500kg
最大燃料搭載量13,690kg
航続距離5,463km(2,950nm)※満席、LRC、標準的な予備燃料、代替空港100nm
最大巡航速度マッハ0.82
運用上昇限度41,000ft
エンジンPratt & Whitney PW1900G × 2
離陸滑走路長(最大離陸重量、ISA、海面)1,615m
着陸滑走路長(最大着陸重量、ISA、海面)1,215m
離陸滑走路長(500nmミッション、満席、ISA、海面)1,150m

出典はEmbraerの公式スペックシートである。航続距離については、Embraerの商業航空向けサイトや一部の航空会社向け資料で5,278km(2,850nm)と記載される例もあり、資料によって数値が異なる。JALの発表は5,463kmを採用している。いずれも満席時の条件付きの数値であり、実際の運航では重量や気象で変わる。

【考察】

J-AIRが運航する国内線では、この航続距離を使い切る場面は想定しにくい。短距離路線では、燃費、離着陸性能、整備費、そして座席数と需要の釣り合いが評価の中心になるとみられる。

4. 従来型E190から何が変わったか

E190-E2は全長を従来型E190とほぼ同じに保ちながら、エンジン、主翼、飛行制御を一新した。

項目従来型E190E190-E2
全幅28.72m33.72m
最大離陸重量最大51.8t56.4t
エンジンGE CF34-10EPW1900G
航続距離約4,537km約5,463km
飛行制御部分的なFBW三軸フルFBW

エンジン。 PW1900Gはギヤードターボファン(GTF)である。ファンと低圧タービンの間に減速ギアを置き、大型ファンは低速、タービンは高速と、それぞれ効率のよい回転数で運転できる。バイパス比は約12対1(メーカー公表値)で、燃費と騒音の低減に有利である。

主翼。 翼幅は従来型より約5m(約17%)広い33.72mとなった。細長い高アスペクト比の主翼は誘導抵抗を減らし、巡航時の揚抗比を改善する。

フライ・バイ・ワイヤ。 操縦入力を電気信号として飛行制御コンピューターに送る方式で、機体姿勢や荷重の管理を最適化できる。Embraerは、これにより尾翼などの構造を最適化できたと説明している。

燃費。 Embraerは2018年に、設計目標の16%を上回る17.3%の燃料消費削減(従来型E190比)を飛行試験で確認したと発表した。Embraerの説明では、内訳は推進系(エンジン)が約11ポイント、新主翼・空力改善・フライ・バイ・ワイヤの合計が約6.3ポイントである。さらに2024年7月のファンボロー航空ショーで、実運航データに基づく2.5%の追加改善を発表している。いずれもメーカー公表値であり、すべての路線で同じ削減率が得られることを保証するものではない。

両者を単純に合算すると約19%となるが、これは当ラボの試算であり、Embraerが同じ数値を公表しているわけではない。

5. 世界での運航実績と受注・納入

E190-E2の主な運航会社は次のとおりである。

  • Widerøe(ノルウェー):ローンチカスタマー。ターボプロップ中心の地域航空会社が、より長い路線へ展開するために導入した。
  • Helvetic Airways(スイス):8機を受領済み。
  • Scoot(シンガポール):リース会社Azorraから9機を導入する契約で、2024年に運航を開始した。1クラス112席の仕様で、東南アジアの中小都市路線に投入している。
  • Virgin Australia Regional Airlines(豪州):2024年8月に8機を発注し、2025年9月に初号機を受領、同年10月27日から運航を開始した。老朽化したFokker 100の後継で、同社は約30%の排出削減を見込むと説明している。なおこれはFokker 100との比較であり、初代E190との比較ではない。

受注・納入の公式統計(Embraer)は次のとおりである。

時点確定受注累計納入受注残
2025年末67機33機34機
2026年第1四半期末65機34機31機
2026年第2四半期―4機納入(累計38機)―
2026年第3四半期―4機納入(累計42機※)―

第3四半期の納入4機はEmbraerが10月2日に公表した。2025年末からの累計納入を合算すると42機となるが、これは当ラボの算出値である(表中の※)。

第2四半期末以降は、新規の確定発注が相次いだ。

  • Luxair(ルクセンブルク):2026年7月21日に購入権3機分を確定発注へ転換。100席仕様で、初号機は2028年末の予定。
  • ANA:9月4日に追加8機を正式発注。
  • JAL:10月14日に16機を確定発注。

【考察】

第1四半期末の確定受注65機にこの27機を単純加算すると92機規模となり、累計納入42機を差し引いた受注残は約50機となる。ただしこれは当ラボの試算であり、次の点は確認できていない。

  • 第2四半期以降の受注変動の有無
  • 各発注の計上時期(JAL分は9月末より後の発表であり、公式統計への反映は次回以降となる可能性がある)
  • 2025年末から2026年第1四半期にかけて確定受注が67機から65機に減った理由

第3四半期の機種別受注残は2026年10月15日時点でEmbraerから公表されておらず、公式の最新累計受注数は確認できない。

E2シリーズ全体では、E195-E2の確定受注が2025年末時点で401機と、E190-E2の67機を大きく上回る。

【考察】

この差は、航空会社が100席級より120〜140席級の座席当たりコストを重視していることの表れとみられる。

6. 就航後の技術課題――AD(耐空性改善命令)とGTFエンジン

型式証明を取得した後も、運航や整備を通じて問題が見つかることはある。E190-E2(ERJ 190-300)についても、FAAは次のようなADを発行している。

  • エルロン制御系のバックラッシュ:翼のヒンジ軸受の摩耗が原因で、制御系のガタが過大になると振動(リミットサイクル振動)で機体構造や操縦性に影響しうるとして、定期点検を要求(2025年1月29日発効)。
  • ブレーキ:モジュラー電子ユニットの故障により、操縦士がペダルを踏むまで通常ブレーキの喪失に気づかない可能性があるとして対応を要求(2025年4月14日発効)。
  • 離陸性能計算:コンピューター化された飛行規程の離陸計算モジュールに不整合が見つかり、修正を要求(2026年2月17日発効)。

これらは潜在的な危険の事前是正であり、直ちに事故の発生を意味するものではない。

PW1900Gにも、GTF系列の粉末冶金材問題の影響が及んでいる。2024年1月にFAAは、PW1500G(A220)とPW1900G(E2)にも高圧タービンのハブ/ディスクや高圧圧縮機8段ディスクの超音波検査を求める案を示した。その後も、PW1919G等を対象に高圧圧縮機7段ロータを扱うAD 2025-04-13が出されている。

ただし、A320neoのPW1100G-JMとE190-E2のPW1900Gでは対象部品や運航への影響が同じとは限らない。GTF系列全体の問題とE190-E2固有の問題は区別して評価する必要がある。

Embraerは2024年7月、E2のGTFについて、運用ロジックの改良などでtime on wing(エンジンを機体に装着したまま運用できる時間)を約10%延ばし、15年間で1機当たり約50万ドルの費用削減につながると発表した。これはメーカー試算であり、実際の効果は今後の運航実績で確認する必要がある。

7. なぜJALとANAはE190-E2を選んだのか

JALは発表の中で、国内線事業が業務需要の減少、中長期的な人口減少、物価上昇や円安によるコスト増に直面していると説明している。E190-E2の導入は、J-AIRによる地方路線の運営で、持続可能性と地域貢献を両立する長期戦略の中核と位置づけた。ANAは、需給に合わせた柔軟な運航と運航コストの抑制を理由に挙げている。

なお、EmbraerはJALとの間で、E170・E190計32機の部品プール契約を2026年9月21日に更新したと発表しており、JALのE-Jetの6か月平均サービス信頼性は99.8%とされる。これは現行の初代E-Jetの数値であり、E190-E2の信頼性を示すものではない。

【考察】

当ラボは、この選定の背景に国内線の「供給の細分化」があるとみる。150〜180席の機材では需要が100人前後の路線を埋めにくい一方、便数を減らせば利便性や乗り継ぎ需要を損なう。100席前後のジェット機は、便数を維持しながら供給座席数を調整できる選択肢である。

ただし、機材更新がそのまま収益改善につながるとは限らない。J-AIRのE190は現在95席、E190-E2の標準は97〜114席であり、座席数はほぼ同規模である。一方、76席のE170を置き換えた場合は1便当たりの供給が増える。JALが確定16機とオプション10機の合計26機を、現有32機の更新にどう割り当てるのかは未公表であり、投入路線、便数、客室仕様の発表が今後の注目点となる。

参考:A220-100との比較

項目E190-E2Airbus A220-100
標準的な座席数97〜114席100〜120席(2クラス)
最大離陸重量56.4t63.73t
航続距離2,950nm(5,463km)3,600nm
客室配列2+22+3
型式証明2018年2月2015年12月

【考察】

A220-100はE190-E2より機体が重く、航続距離が長い。一方、約100人しか需要のない短距離路線では、より小さなE190-E2の機体規模が有利に働く可能性がある。ただし、路線別の運航費を直接比較した公開データは確認できず、優劣は断定できない。J-AIRが長年E-Jetを運航してきた実績が選定に影響した可能性もあるが、JALは公式にはこの点に言及していない。

8. 三菱スペースジェットとの関係

スペースジェットは、2008年3月27日にANAが確定15機・オプション10機の最大25機を発注して事業化された。JALは2014年8月28日に32機をすべて確定で発注している。JALはE170とE190でいったんEmbraer機に統一したうえで、スペースジェットを導入する計画だった。

三菱重工業は2020年10月に開発を事実上凍結し、2023年2月7日に開発中止を正式発表した。事業の採算性が見込めないこと、型式証明の取得費用が今後数年で数千億円規模に及ぶ見込みだったことが理由とされた。ANAは2023年4月24日に契約を解除し、JALも同年2月に「導入予定航空機」に関する補償金80億円を受領すると発表している(スペースジェットの補償金とみられる)。

座席数の規模は近い。主な諸元を比べると次のとおりである。

項目E190-E2SpaceJet(MRJ90)
全長36.24m約35.8m
全幅33.72m約29.2m
座席数97〜114席標準92席(1クラス)。最終M90は88席
最大離陸重量56.4t約42.8t(MRJ90LR)
エンジンPW1900G(GTF)PW1217G(PW1200G系、GTF)
航続距離約5,463km約3,310km(MRJ90LR、参考値)
状況商業運航中2023年に開発中止

※SpaceJet側の諸元は、JALが2014年8月に発表したMRJ90の仕様(全長・全幅・座席数・航続距離)と、三菱重工が2008年に公表したMRJ90LRの最大離陸重量による。2008年の発表時は全幅30.9mとされており、設計変更を経た開発後期のM90(標準88席)の最終仕様とは一致しない可能性がある。

ただし、最大離陸重量には約13.6t、航続距離には約2,150kmの差があり、両機は完全に同等の機体ではない。それでも、GTFエンジンを採用した次世代リージョナルジェットという基本的な狙いは共通していた。

【考察】

JALとANAが「スペースジェットの代替としてE190-E2を選んだ」と明言したわけではない。しかし、2008年と2014年の発注計画と、2025年・2026年の発注を並べると、スペースジェットが担うはずだった更新需要の一部をE190-E2が引き継いだ構図になっていることは否定しにくい。

両機の明暗を分けたのは、エンジンや設計思想の優劣ではなかったと当ラボはみる。Embraerは、ERJやE-Jetsで認証、製造、運航支援の経験を積み上げた既存の基盤の上にE190-E2を開発し、型式証明を取得して量産に移った。三菱は日本の航空機メーカーとして長い空白を経た挑戦であり、認証対応と設計変更が開発の長期化と費用の増大につながった。認証能力、供給網、開発費、量産体制を総合した結果とみられる。

仮にスペースジェットが完成していた場合の機材選定がどうなっていたかは、燃費、価格、整備性、納期など多くの要因に左右されるため、断定できない。

9. まとめ――E190-E2が日本の国内線で果たす役割

【考察】

E190-E2の強みは、需要に見合った100席前後の座席数を保ちながら、ジェット機の速度と、中央席のない2+2配列の客室を維持できる点にある。一方、世界の航空市場では機体の大型化が進み、E195-E2の受注がE190-E2を大きく上回っている。100席級がどの路線でも最適とは限らない。

今後の評価軸は、燃費の数値だけではない。PW1900Gの整備間隔、部品供給、予備エンジンの確保、ADへの対応が実際の稼働率と整備費にどう表れるかで、長期的な経済性が決まる。国内でも、J-AIRとIBEXの運航体制、投入路線、座席数の仕様が明らかになるにつれ、今回の選定の意味はより具体的に見えてくるだろう。

E190-E2の日本導入は、スペースジェットの経験を改めて振り返る契機にもなる。


参考リンク

【付記】

本記事は2026年10月15日時点の公開情報(OSINT)に基づく。本文の記述の一部は、上記リンク以外の公開資料(Embraer、各社の発表、FAAの公開文書など)による。

機体性能および燃費改善率にはメーカー公表値が含まれ、実際の運航性能は条件によって異なる。

累計納入数の42機、および受注約92機・受注残約50機は、Embraerの四半期公表値と各社の発注発表から当ラボが算出した試算であり、Embraerの公式統計ではない。

航空会社の機材選定の理由やスペースジェットとの関係に関する記述は、公開情報に基づく当ラボの見解である。

―航空インテリジェンスラボ|2026年10月15日

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